跡×杏 本番なしにて失礼
都心にある有名ホテル。
フロントに一人の少女が恐る恐る声をかけた。
セーラー服に大きなテニスバッグ。
明らかにその場からは浮いている。
が、彼女がフロントで名前を告げた途端、慇懃に対応していたホテルマンが顔色を変える。
彼は断る少女の荷物を持ち、些か大袈裟な程丁寧に彼女を最上階の部屋へと案内した。
エレベーターを降り踏み出した一歩目の柔らかすぎる絨毯の感触にその少女、橘杏は驚いたように目を見開いた。
こんな所を、中学生が利用するなんて。
ますます、あいつは嫌な奴だ。
大きな扉の前に着くとホテルマンは機械のように鋭角なお辞儀を残して踵を返す。
さて。
杏は不安な気持ちを押し隠すとドアをノックした。
「入れ。」
横柄な、しかし思わず震えるような美声がドア越しに聞こえる。
杏は躊躇いを打ち消し、意を決すると扉を開けた。
「ようこそ。」
柔らかい間接照明と甘い香り。
テレビの中でしか見た事のないような豪奢な部屋。
正面の大きな窓の外には夜景が広がっている。
そしてその中にあってまったく違和感のない男。
ソファに腰掛けていた男は、杏の姿を確認すると恐ろしい程に整った顔に満足そうに笑みを浮かべた。
「迷子にならなかったか、杏ちゃん。」
「心配して頂かなくても結構よ。」
挑戦的に言い放つ杏にも男はまったく動じない。
世界が、自分の為に廻っているかのような傲慢な表情。
「約束は守ったんだから、もう二度とテニスコートには来ないで!跡部くん。」
強い口調だが、語尾が震える。
跡部景吾はそんな杏の心を見透かしたように余裕の笑みを絶やさない。
「いいぜ、お前が約束を守るなら。」
その言葉に杏はぎりっと奥歯を噛締める。
もう二度とストリートテニス場へ来て皆を痛めつけるような真似はしない。
かわりに杏が一度跡部の言う通りにする。
その約束の意味が分からない程、杏も子供ではない。
あの場所は、杏にとって大切な場所だ。
跡部に好き勝手に荒らされるのは我慢できないが、テニスで打ち負かすのは到底不可能だ。
「来い。」
男の手が、杏に向かって差し出される。
杏の体がびくり、と揺れた後ゆっくりと導かれるように跡部の前へと進む。
杏には、経験がない。
正直な所を言えば怖い。
しかし跡部に対してそんな弱みは絶対見せたくない。
逃げ出したい気持ちを必死に押さえ込み、杏は座っている跡部の目の前に立った。
「どうにでもしたらいいよ。」
「随分投げ遣りだな。」
差し出されていた跡部の手が、するり、と杏の短いスカートの足をなで上げる。
突然の事に杏の体が硬直する。
怒りと羞恥心で言葉も出ない。
しかしこうなる事を分かっていてここに来たのだ。
「怖いか?」
跡部はその杏の蒼褪めた顔を見上げ挑発する。
全然!
そう言おうとしたが触れていた跡部の手が一気に太腿まで上がり、杏は絶句した。
「やっ。」
思わずスカートの裾を押さえる。
が、あまり意味はない。
大きな跡部の掌が、すべすべとした杏の脚を柔らかく撫でる。
全身が総毛立つ。
杏は夢中でその手を捕まえた。
跡部は呆れたように一つ息をついて、パニックを起こしている杏の額をこつん、と突付いた。
「杏ちゃん。いい子にしないと駄目だろ。」
からかうような跡部の声に、杏は何か言い返そうとするが言葉に出来ずに何とか体の力を抜いた。
すぐさま、跡部の手がすんなりとした形のいい彼女の脚への愛撫を再開する。
「いい子だ。」
低く、甘い声。
その声を発した唇が杏の腿に軽く押し付けられる。
背筋をぞくりと何かが駆け上がり、杏は思わず息を漏らす。
唇が、啄ばむように上へと登ってくる。
その間に掌は薄い下着に守られたヒップを軽く揉み始める。
「邪魔だな。」
スカートの中に頭を突っ込む形になった跡部がぼそりと呟くと、つい、と指先でスカートを捲った。
「これ、持ってろ。」
これから何をされるのか分からない恐怖に震えが止まらない。
小刻みに震える杏の両手が、言われるままにスカートの裾を持ち上げる。
その杏の態度に満足すると、跡部は後ろに回していた右手の指を下着の中へと差し入れる。
「!!」
下着の隙間から跡部の指が這うように杏のヒップを蹂躙する。
はっきりと分かる指の感触に、杏はただ、スカートの裾を握り締める。
その指先が、つ、と下へと降りてくる。
「いやっ!」
思わず拒絶の声が出るが、跡部の動きは止まらない。
誰にも触らせた事のない、杏の花弁。
跡部の指が侵入しよとするが、きゅっと締めた杏の内腿が最後の抵抗をする。
と、今度は跡部の唇が前から下着越しに杏の花芯を責め始める。
くちゅん、と唾液を含ませた跡部の舌先が薄い布を伝わって杏の大切な所を刺激する。
「っ…あっ!」
反射的に腰を引いた途端、後ろからの侵略を許してしまった。
「やだっ。」
持ち上げていたスカートを引き下げ、いやいやをする子供のように必死に訴えるが、
一度許してしまった侵略を打ち返す事は出来ない。
跡部の指先はじっくりと杏の秘部の谷間の表面を行き来する。
その内、下腹部に今まで味わった事のない熱い潤いが溢れ、杏は座っている跡部の肩に崩れるように体を預ける。
「いや…ぁ。」
くちゅくちゅと湿った音が広い部屋の中に響きだす。
跡部の指が少しだけ、杏の奥へと入り込む。
「ひっ。」
背筋がビクンと仰け反り、杏は跡部の肩で必死に頭を振る。
変だ。こんな男、大嫌いなのに。
そう思っていても、身体が甘く痺れていう事をきかない。
跡部は、やっと下着から手を抜くと、もたれかかった杏の体を自分の腿の上に座らせた。
「可愛いじゃねぇか、杏ちゃん。」
低い囁きにも言い返す事もできず、杏はぐったりと跡部に寄り掛かる。
跡部の手が、今度はセーラー服の裾を捲り上げた。
もう、抵抗できない。
跡部の唇と舌が、杏の白い腹部からゆっくりと這い上がる。
「んっ…ぁっ…。」
くすぐったさと快感の間で杏の体は刺激に対して素直に反応する。
薄いブルーのブラジャーのホックを器用に外し、微妙に熱を帯びた跡部の掌が綺麗な白い胸をゆっくりと揉みだす。
「いや…ん。」
杏の唇から息交じりに聞こえる細い声からはもう抵抗の色がない。
跡部はぺろり、と杏の胸の谷間を舐め上げると、彼女の髪を横に流して耳たぶを軽く噛んだ。
「どうしたい?言ってみろ。」
ぞくぞくと全身を貫く劣情の波に杏はあっさりと飲み込まれていく。
目尻をぽうっと赤く染め、跡部に懇願の眼差しを向ける。
どうすれば、なんて分からない。
でも、もっとして欲しい。
跡部はくくく、と声を漏らして笑うと杏をソファに寝かせた。
あんなに生意気な子猫が、こうして自分の掌で無防備になる瞬間が溜まらない。
セーラー服の裾を持ち上げると、ぷっくりと隆起した桜色の乳首が顔を出す。
跡部はそれを舌先で軽く嬲る。
「…ぁ。」
消え入りそうな小さな声。
次の瞬間、乳首を口に含み舌で転がす。
「ぁ…ふっ…。」
スカートの下からは右手が侵入し、下着を下ろすと
もうしっとりと蜜が溢れた柔らかな花弁を割って、その先端で固くなった花芯をコリコリといたぶる。
「あぁ!やぁん…っ!」
あっという間にとろとろと蜜が蕩け出す。
跡部は存分に味わった可愛らしい乳首から唇を離すと、ぐい、と杏の目の前に顔を近づけた。
「お願いしてみろ。どうして欲しい。」
その傲然とした不遜な表情。
跡部は常に勝者だ。
ほんの少しだけ戻って来た理性に、杏は悔しそうに眉を寄せる。
が、そっとその跡部の頬を両手で挟んで不器用に唇を合わせた。
「…気持ちよく、して下さい。」
「いい子だな、杏ちゃん。ご褒美だ。」
そう言ってもう一度杏の唇に軽いキスを落とすと、跡部はするりと杏の右足を持ち上げた。
熱の篭ったその部分にひやりと外気があたり、杏は身震いする。
が、その直後、跡部の舌が杏の蜜壷を貪り始める。
「あ…ぁん!!」
くちゅくちゅと濡れた音と堪えきれない杏の声が部屋に響く。
跡部の舌はぐっと奥へ入り込もうとしたかと思えば、敏感になった杏の剥き出しの花芯を嬲り、
時にわざといやらしい音を立てて杏から溢れ出してくる蜜を吸い上げる。
頭が真っ白になっていく。もう何も考えられない。
杏の意識は白濁としていく。
「き…もちいい…!んっっ!もっと…して…っ!」
舌での愛撫が終わると、すぐさま、跡部の長い指がぐっと中へと侵入する。
既に痛みや抵抗はないが、余りの質感に杏は息を詰まらせ体を仰け反らせる。
「すっかりぬるぬるですぐ入ったな。初めてだろ?」
跡部がぐちゅっと音を立てて指をゆっくり抜き差しする。
初めの異物感はあっさりと快感に飲み込まれた。
跡部の指の動きに合わせ、杏の息遣いが荒くなっていく。
跡部の指が杏の中で彼女の花を開かせるように微妙な動きを繰り返す。
「あ…あ…っ。」
羞恥心も、意地も、全てが快感に押し流される。
薄く開かれた杏の唇から糸を引いて落ちた唾液を唇で拭ってやると、跡部は体を起こした。
「そろそろ入れるぞ。」
白いシャツをはだけ、ズボンのボタンを外しジッパーを下ろすと、隆起した跡部自身が杏の目にも入る。
杏は、こくりと頷いた。
その杏にふ、と笑みを漏らすと跡部はぐっと腰を杏の両脚の間に押し付ける。
跡部の唾液と杏の愛液で濡れそぼった秘部に、固く熱い跡部自身があてがわれ、
ぐっと杏の花弁を押し割ろうとしている。
今までとは比べ物にならない程の刺激に、杏は思わず固く目をつぶった。
――ごめんね…。――
ごめん。
誰に、謝ろうとしているのだろう。
その時、杏の脳裏にあの男の開けっ広げな笑顔が過ぎった。
「ん…くぅ…。」
奥へ入り込もうと力を入れかけた時、跡部は杏の異変に気付いた。
両手で顔を隠し、震えている。
その震えは先刻までの未知の快感への恐怖ではない。
跡部は一つ溜め息を吐いて呆れたように笑い、身体を引くと横たわっている杏の横に腰を降ろした。
「…桃城くん…お兄ちゃん…。」
そんな事だろうとは思ったが。
跡部は苦笑すると杏の髪を撫でてやった。
「どうした、怖くなっちまったのか。」
杏は言葉では答えずただ小さく頷いた。
こうなってしまうと、跡部も萎えてしまう。
「ちょっと休んだら、もう帰れ。うちの車で近所まで送らせる。」
跡部は傍にあったショールを杏の身体に掛けてやり、
ルームサービスの電話を掛けて彼女の為に暖かいミルクティーを注文した。
少しして、杏は服を直すとダイニングにいた跡部の所へやってきた。
目を真っ赤に泣き腫らした杏に、跡部は笑って見せる。
「もうできもしねぇ事をすんなよ。」
「…ごめんなさい。」
打ちのめされたよう萎れている杏にミルクティーを飲ませ、跡部は彼女を送り出した。
先刻のホテルマンが、ドアの外で待っている。
杏は一度ぺこりと跡部に頭を下げるとホテルマンに促がされるように、エレベーターの中へ消えていった。
その閉じた扉に向かい、跡部は不敵な笑みを漏らすと、
「またな。」
と呟いた。
あれから数日が経っている。
杏はいつもと変わらない生活を送っている。
ストリートテニス場に跡部が姿を見せなくなり、皆ほっとしている。
友達と笑い合い、桃城とテニスをし、何の不満もない毎日。
でも。
時々、ぞくりと背筋を這い上がるあの感覚。
一人で部屋にいる時に触れた秘部に止め処なく溢れてくる蜜。
あの先の、もっと上の快感。
それを、知りたい。
杏は不安な気持ちを押し隠すとドアをノックした。
「入れ。」
横柄な、しかし思わず震えるような美声がドア越しに聞こえる。
その声は、常に勝者の声。
|