跡×杏 521
暖かい湯気が、広い浴室の中に充満している。
流れ落ちるシャワーの水音に混じって荒い息遣いが反響する。
たっぷりと舌を絡めた後、跡部景吾は唇を一度離し、彼女の上気した頬や額に零れている水滴を舐め上げた。
小柄な彼女は少し苦しげに上を向いて跡部のなすがままになっている。
幼さと、躊躇いがちな色香が混ざり合うその身体はボリュームは足りないが全体的に細くすんなりとしていて、
ふんわりとした胸の形も柔らかさも申し分ない。
つん、と遠慮がちに咲いた綺麗なピンク色の小さな乳首。
大きくは無いが手触りのよさそうなヒップ。
全てが跡部の好みに適う。
きつめで勝気なその性格に反した頼りなげな身体。
跡部は大理石の壁に手をつき、じっくりとその裸体を鑑賞する。
橘杏はその視線に気付くと大きな目を伏せて、さり気なく両手で胸を隠す。
今回は脅迫された訳ではなく、自分から望んでここにきたのだ。
しかし一切の羞恥心を捨てる事など杏にはできない。
後悔と、期待が綯い交ぜになり、杏の中で嵐が吹き荒れている。
この大嫌いな男にいいように踊らされているのは屈辱だ。
でも、どうしても知りたい。
未発達な身体に刻みつけられた快感のその先を。
跡部は杏の複雑な心情を見透かすように口元に笑みを浮かべ、
彼女の胸の前で組まれた両腕を解き柔らかい胸の谷間に顔を埋めた。
「っ…。」
細い体が過敏に反応する。
杏は持て余した両手で固く握り拳を作り跡部の愛撫に構えた。
跡部は構わずに舌先で胸の柔らかさを堪能する。
僅かに触れた舌先にも杏の心臓が緊張で激しく鼓動を打っているのがはっきりと分かる。
跡部は二本の指で擽るように乳首を弄び、くん、と摘み上げた。
「や…んっ!」
ぽつりと固く充血した乳首を空いた人差し指でくりくりといじると、
杏の唇から熱い息が漏れて跡部の濡れた前髪に掛かる。
まだ初々しい杏の反応が、跡部を劣情を刺激する。
壁に寄り掛かり、必死で両脚を踏ん張って跡部の愛撫に耐えている様がいじらしい。
跡部の唇がちゅっと音を立てて、杏の真っ白な肌に飛び散っている水滴を掬いながらすべる。
首筋、鎖骨。いつしか緩く開かれた指の間。
「んっ。」
杏は目を閉じ、不規則な熱い吐息で跡部の愛撫に応える。
跡部はじらすように舌先でちょん、と軽く触れた後にすっかり隆起した乳首を口に含んだ。
「く…ふ…。」
跡部の与える刺激にすぐさま反応してしまう。
その悔しさも、快感の波に押し流されていく。
唇と舌で胸を愛撫していた跡部の右手が支えていた杏の腰からするり、と内腿へと滑り、ふと止まった。
跡部は確認するように指の腹でもう一度その場をなぞり、低い笑い声を漏らして杏の胸から顔を離した。
「ちょっと見ない間にいやらしい子になっちまったな。」
そう言いながら、脚をなぞった指先を杏の乳首になすりつける。
湯気の水滴や汗とは明らかに違うぬるぬるとした感触に杏はかっと赤面した。
全身を覆う水滴に混ざって、溢れた愛液が内腿に伝い落ちているのはさっきから分かっている。
嫌な男。
愛液をなすりつけた乳首をぺろりと舐め上げ、跡部はまだ濡れ光っている二本の指先を杏の唇に軽く押し付ける。
「まだ触ってもないのにこんなになってるぜ。」
杏は屈辱に一度跡部をきつく睨みつけるとふいっと顔を背けた。
まだ反抗する元気が残っているらしい。
跡部は呆れたように軽く眉を上げ、右手をもう一度太腿に滑らせた。
薄く、柔らかい茂みを優しく撫で、熱さに導かれるようにその奥へと指を侵入させる。
「やぁっ!」
拒絶の言葉と裏腹に、杏の花弁は蜜を湛えて跡部の指を迎え入れた。
双丘の谷間を軽く行き来しただけで、跡部の掌まで愛液が滴ってくる。
「すげぇな。とろとろだ。」
杏が嫌がるのを分かっていながら、跡部は耳元で囁く。
反応したくない。
したくはないのにまた更に中からくちゅんと蜜が溢れ出す。
「悪い子だな、杏ちゃん。自分で一杯触ったりしたろ。」
跡部の指が濡れそぼった花弁を押し開き、既に勃起した肉芽をすぐに探し当てる。
「ぁっ…!」
びくん、と杏の身体が跳ね上がった。
「ここが好きなのか?」
くちゅくちゅと音を立てて跡部の人差し指が杏の花芯を軽く擦る。
「ちが…っ。あ…んっ!」
辛うじて言い返すがその場所へのもっと強い刺激を求めて杏の腰が前後する。
跡部はその杏の反応に満足そうに口元を綻ばせる。
「おいおい。いけない子だ。」
すい、と跡部の指が杏の陰部から離れる。
急に快感から突き放され、杏はきゅん、と切なげに眉を寄せて跡部を見上げた。
煽情的なその表情に、跡部の背筋がぞくりと震える。
ついこの間まで顔を合わせればその可愛らしい顔に露骨な嫌悪感しか現さなかった杏を完全に支配している。
「こういう時はどうするんだ?こないだ教えただろ?」
優しく諭すように、跡部は苦しげな杏に問い掛ける。
杏は瞬時、苦悶の表情を浮かべたが両手で跡部の右手を自分の秘部へと導いた。
「お願い…。跡部くん。さっきの所、もっと、して…。」
潤んだ目尻に浮かぶ涙を唇で掬ってやり、跡部はぐっと柔らかい襞の中へ指を沈める。
「ひ…ゃ!」
ぬるぬるとした蜜壷は前の時よりもすんなり跡部の中指を受け入れた。
抜き差ししようとするがきゅうっとその指を熱い肉襞が締め付ける。
その間にも親指が敏感な花芯をコリコリといたぶり続ける。
「ぃ…やぁんっ!」
あの日から時々何もしていないのにくちゅっ、と愛液で下着が濡れる事があった。
ずきずきと疼く花芯を自分でおっかなびっくり触ってみたりもしたが、それとは、全然違う。
ぐちゅぐちゅと音を立てて杏の中を蹂躙する跡部の愛撫に自我が崩壊していく。
もう脚に力が入らない。
杏はきゅっと跡部の首にしがみ付いた。
「跡部くんっ…っ!あ…っ、はぁ…っ!」
唇は唾液を零しながら大嫌いな筈の男の名を呼び続ける。
跡部はそれに応えるように、杏の頬に、唇に、額に軽く口付ける。
花芯への刺激の喜びが、いつしかもっと深い所への刺激を求める疼きに変わっていく。
それを察したのか、跡部は一度杏の中から指を抜き、それをもう一度杏の唇に軽く押し当てた。
先刻とは比べ物にならない程蜜の滴った跡部の指。
杏はすこし戸惑った後、その指を恐る恐る口に含んだ。
汗に混じったまた別の物の味が口内に広がる。
跡部はゆっくりその指を抜き差しすると、脱力しかけた杏の腰を左腕で支え、自分の腰を押し付けた。
ぐりっと陰部に当たるその質感に、杏は思わず咥えていた跡部の指を離し腰を引こうとするが、
跡部はそれを許さない。
今まで二人共全裸だったのだからそれも見えてはいたのだが、杏はあえて見ないようにしていた。
動揺する杏の乱れた髪を軽く指で梳いてやり、跡部はからかう。
「また、泣いて逃げ帰るか?」
杏はじっと跡部を見上げ、唇を噛むとふるふると頭を振った。
ここで逃げても変わってしまった自分の身体を持て余してもっと苦しくて切なくなるだけだ。
跡部は杏の腰を離してやると、ぺたりと床に座り込んだ彼女をバスタオルでくるんで軽々と抱き上げた。
上気した体から湯気をまとって跡部は寝室へ向かう。
浴室よりは少し寒いが、完全に管理されたホテルの空調は火照った体に心地いい位だ。
薄暗い寝室のキングサイズのベッドに杏を下ろしてやり、
丁寧に身体を拭いてから跡部はぐっと両膝を折った杏の脚を開いた。
「やっ。」
突然の跡部の行動に、杏は脚を閉じようとするが跡部は彼女の両膝を押さえてそれを許さない。
薄い茂みの奥で綺麗なピンク色の濡れそぼった花弁がぱっくりと花を開きひくひくと痙攣している。
「初めてなのにこんなに欲しがってるぜ、杏ちゃん。」
跡部の指が剥き出しになった花芯をこりこりとつまむ。
「ひ…やんっ!」
見られている事で更に刺激され、とろりと愛液が花弁から溢れてシーツに滴り落ちた。
跡部は糸を引く愛液を下から掬うように舐め上げる。
「あふっ…!」
ざらりとした跡部の厚い舌の感覚に、杏の全身が麻痺したように痙攣した。
跡部の舌が、遠慮なく杏の蜜壷の中へと侵入する。
尽きる事なく杏の奥からは蜜が溢れだす。
「舐められるのも好きなんだな。処女のくせにもうぐちょぐちょだぜ。」
花弁を指で押し開き、ぴちゃぴちゃと蕩け出す愛液を舐め上げながら跡部は言葉でも杏を責める。
生温かい跡部の舌に翻弄され、杏はただ息混じりに哀願する。
もっと。
もっと。
可愛らしく隆起した肉芽を舌先で散々弄んでから、やっと跡部は杏の上に覆い被さった。
杏は荒い息を吐きながら跡部の首に細い腕を廻すと、自分の愛液に塗れた彼の唇を貪るように求める。
互いの舌が絡み合い、どちらのとも分からない唾液がシーツを濡らしていく。
「もう泣いても許してやらねぇぞ。」
唇を離した跡部の言葉に、杏はこくりと頷いた。
それを合図に跡部の隆起したものが杏の花弁にぐっと押し当てられる。
杏は息を殺し、固く目を瞑る。
まだ固い杏の入り口は跡部の侵入を拒もうとするが溢れ続けるぬるぬるとした愛液がその手助けをする。
ズン!と途方も無い衝撃が杏の身体を突き抜ける。
「!!」
痛みよりも、余りの圧迫と質感に杏は目を見開き、喘ぐように唇を開く。
跡部がはっ、と一度荒い息を吐いた。
きつい。
きゅうっと杏の幾重もの肉襞が跡部を柔らかく強く締め付ける。
狭い蜜壷から押し出された愛液が溢れ出して跡部の付け根を濡らした。
跡部は背筋を仰け反らせたまま呼吸のできない杏の髪を撫でてやり、口付けを落とす。
「…くぅ…っ。」
何とか声を漏らした杏に、跡部はまた腰に力を入れる。
「あっ…ふ!」
「動くぞ。」
その言葉に杏はただがくがくと頷いた。
愛液に塗れた跡部の男根がじゅっと音を立てて引き抜かれ、また突き入れられる。
「ひ…っやっ!」
頭の芯が痺れてしまった何が起こっているのか分からない。
跡部の動きに合わせて溢れる愛液の淫靡な音だけが室内に響いている。
最初の衝撃が過ぎ去った後、杏の全身を甘い痺れが電流のように駆け巡る。
「…は…ぁっ!!」
跡部自身に突き立てられる度に杏の中から得体の知れない快感がせり上がってくる。
――何?――
びくんっ!と一度身体を跳ね上げた後、杏の中の襞の動きが激しくなり動いていた跡部も思わず眉を寄せる。
――やべぇな。――
杏の恍惚と苦痛の表情に突き動かされ跡部も自分のペースを乱している。
「あぁっ…ん!跡部くん…!あ…とべ…くん!!」
杏の声が求めるように跡部を呼ぶ。
緩めることが出来ずに、跡部の動きが激しさを増す。
杏の目の前が一瞬真っ白に染まり、全身の血が沸騰する。
「く…っ。」
「あぁんっっ!」
ぽたぽた、と杏の白い肌に熱い液体が零され、荒い呼吸をした跡部の身体がゆっくりと彼女の上に降りてきた。
ことん、と杏の小さな肩に汗ばんだ跡部の額が乗る。
杏はまだ、白濁とした意識の中で跡部の柔らかな髪をいつも彼がしてくれるように優しく撫でた。
あと五人は入れそうな広すぎるバスタブの中に二人はぼんやりと浸かっている。
湯冷えをするといけないと、放心した杏を抱き上げてまた浴室に戻ってきたのだ。
跡部は掛かった精液をシャワーで流してやり、そのまま華奢な杏は跡部の両脚の間に納まっている。
思った以上かも知れない。
杏の小さな後頭部を眺めながら、跡部は深く満足気な息をつく。
今まで色々な女と経験してきたが、こんなに背筋がぞくぞくするような感触は初めてだ。
先刻、彼女が頂点に達した時の表情と跡部を呼ぶ声が脳裏を掠める。
生まれた時から、欲しい物は全て手にしてきた。
そして、橘杏も同じように手に入れた…。
跡部は杏の髪裾から覗くうなじにつ、と指を走らせると唇を押し付けた。
ぼんやりと放心していた杏の身体が即座にぴくん、と反応する。
軽く歯を当て、舌で擽った後、跡部は白いうなじを強く吸った。
その途端。
ぱしゃん!と水を弾き、杏が勢いよく立ち上がる。
「やめて!!」
跡部に向けられた杏の瞳はほんの少し前までの様子が嘘のように強い嫌悪感に満ちている。
――所有物にはならないという事か。――
杏自身にも向けられているであろうその怒りの眼差しに、跡部は軽く両手を降参の形に上げた。
まあ、いいだろう。
必死になって歯向かってくる方が数段面白い。
毛を逆立てた猫のように肩をいからせ、杏はバスタブを出ると浴室の扉を抜けて行った。
跡部は上げていた手をばしゃっと湯の中に落とし、バスタブに深く身体を沈ませた。
歯向かってみた所で結果は同じだ。
いずれは跡部のものになる。
――しかし…。――
跡部は浴室の高い天井を見上げ、今何故こんなに胸がずきずきと痛むのかその理由を探していた。
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