観月×巴 そのB



「映画ですか?」


「そうです。今度の日曜日、空いてますか?」


観月が巴を誘ったのは、部活が終わった帰りのことだった。


「はい!うわー。外にデートなんて、久しぶりですねっ!」


「なに言ってるんです。いつもしてるでしょう?」


「スクールの練習に行ってるだけじゃないですか。」


膨れる巴を見て苦笑する観月。


「不満ですか?スクールの練習に一緒に行くだけでは?」


「・・・不満じゃないですけど・・・。」


「僕は不満ですよ。」


その言葉にびっくりして観月を見上げる巴に、観月はすかさずキスをした。


「じゃ、約束ですよ。日曜日。10時に青春台駅前で。遅刻しないように。」


「はい!楽しみですね!!」


「君は返事だけは素晴らしいですが、いつも僕より遅いですよ。今度遅れたら何か罰をあげないといけませんね。」


観月の台詞に、苦い顔をする巴。


「罰って・・・何する気ですか?」


素振り1000本とか。

うさぎ跳び500回とか。

だったらやだなぁ。

巴の怯えた様子に、観月は意地悪く んふ、と笑った。


「そうですね。遅れたら・・・」


「遅れたら?」


「駅前でキス100回の刑に処します。」






10分前に観月が到着すると、巴はまだ来ていなかった。

やはり遅れるな、と観月は思って、そのまま約15分待った。

15分すると、全力疾走して近づいてくる巴の姿を見つけた。


「観月さーーん!ごめんなさいっ!!」


「はい。今日も5分の遅刻ですよ。」


やれやれといった風に声をかける観月。

巴は息を切らして頭を下げる。


「うー。だって、絶対間に合うと思ったのに!」


「いつも君は出る時間が遅いんですよ。もっと早く出なさい。」


「はい・・・。すみません。」


巴はしゅんとしながらも、どこかそわそわと落ち着かなさそうにしていることに、観月は気付いた。


「どうかしましたか?」


「え・・・。あの・・・その・・・。」


珍しく言い辛そうにしている巴に、観月は疑問を抱いた。


「なんです?どうしたんですか。」


「・・・ほ、ほんとに罰・・・するんですか?」

言われて初めて観月は気付いた。

確かに、そんな約束をした気もする。

観月は  んふ、と意地悪く笑って。


「そうですね。すると言ったからにはしましょうか。」


今の今まで忘れていたが。

そんなことをわざわざ言ってやる観月ではない。

巴は、顔を赤くした。


「えと。あの、ここ駅前だし。昼前で人も多いし・・・。その、見られちゃうっていうか・・・」


「人が見ていなければいいんですか?」


巴はそれを聞いて、慌てまくる。


「え!?あのっ・・・!」


「あそこ、ビルの陰になって人から見られにくそうですね。・・・行きましょう?」





 
一回目は軽く、二回目には少し長く。

三回目には舐めるように唇に触れ、一度離れて、四回目には激しく舌を絡ませあった。

そのまま、長く口付ける。


「ん・・・うっ・・・!はぁっ・・・」


「ん・・・まだまだ、100回には程遠いですね。」


「こんな長くしてたら、100回まで一日かけても届きませんよ・・・。」


言いながらもうっとりとした表情で観月にしなだれかかってくる巴。
それに満足して抱きしめる観月。


「そうですね。それじゃ、僕も頑張らないといけませんね。」


すかさず唇に触れ、何度も何度も巴の唇をついばむ。

次第に、額に頬、耳たぶ、首筋へとキスの場所をずらしていく。

巴の息が荒くなっていくのを感じて、観月は知らず興奮していった。


「ん・・・観月さん・・・。」


「まだ、名前で呼べないんですか。」


「・・・だって・・・恥ずかしい・・・」


「外でこんなことしているほうがよほど恥ずかしいと思うんですが・・・。」


涙目になっている巴の鎖骨に口付けてきつく吸うと、白い肌に赤い花が咲いた。

満足して、またその花に口付ける。

唇で、巴の身体の輪郭をなぞっていく。

小さく震える巴。


「は・・・はじめさん・・・。」


「いいですよ。それで。もっと呼んで・・・。」


キスする唇を休めずに、観月は巴の身体を探り始めた。

胸に、太ももに手が伸びる。


「・・・はじめさん・・・?」


「・・・すみません。」


観月は巴の耳元でささやいた。


「キスだけじゃ、我慢できないみたいです・・・」






下着の上から触れると、すでにそこはぐっしょりと濡れていた。

恥ずかしそうに 耐えている巴を見て、嗜虐心がくすぐられる。


「キスだけで、こんなになっているんですか?・・・はしたないですね。」


「だ、だって・・・!」

大きな瞳に涙を溜めて、上目遣いで反抗する巴が、愛しくてたまらない。

愛しさに比例して、嗜虐心は増していく。


「だってじゃありませんよ。外でキスして、感じてたんでしょう。」


「・・・はじめさん・・・!」


「今日も、わざと遅刻してきたんでしょう?」


意地悪のつもりで言った台詞。

しかし、巴は真っ赤になって俯いてしまった。

驚いたのは観月だった。


「・・・ほんとに?」


「・・・だって・・・キス100回って、どれくらい時間かかるのかと思って・・・」


馬鹿げたことしなきゃよかった。

巴は心の底から後悔した。

しかし観月は、泣きながらそう言う巴が可愛くてしかたない。

顔がほころぶ。


「僕と、キスしたかったんですか?」


「・・・はじめさん以外と誰とするんですか。」


巴は両腕を観月の首に回して抱きついた。

耳元で囁く。


「はじめさんのキス、好きです。・・・いっぱいしたかったんです。」


「巴くん・・・。」


観月は巴を抱きしめ返した。

自分とキスをしたいという彼女の、なんと可愛いことか。

すっかり骨抜きにされてしまった観月は、巴の望むようにキスをしながら身体を触った。

今はたまらなく巴に触れたかった。


「あ・・・!はじめさん・・・!」


「黙って。・・・人に聞かれてしまいますよ。」


そう言って巴を下着の上からなぶる。

くちゅくちゅと水音がして、巴は観月にしがみついて唇を噛んだ。


「・・・っ!ぁ・・・やぁ・・・」


「可愛いですよ、巴くん・・・。」






耳元で、観月の興奮した息遣いを聞き、巴はさらに高ぶるのを感じた。

それは観月も同じで、下着をよけ、じかに巴の潤んだ部分に触れた。

弧を描きながら徐々に中心を攻める。

卑猥な水音がくちゅくちゅと巴と観月の間に流れる。

声を耐える巴。

その耐える行為そのものが、巴をさらに高みまで追い詰める。

観月に口付けられて、舌が絡み合い、息が出来なくなる。

思考も身体も、言う事をきかない。


「や・・・はじめさん・・・も、立てないっ・・・!」


巴の膝はがくがくと揺れはじめており、長くは立っていられない状態になっていた。


「キスと指だけで、もう立っていられないんですか?困りましたね。先が思いやられますよ。」


観月はさらに巴を壁際に追い詰めて、巴の腰をしっかりと抱く。

あえて耳元で話し掛けた。

巴は耳が弱いことを知っているから。


「僕にしがみついて・・・そう。絶対に放してはいけませんよ。」


「は・・・はい・・・。」


観月は、指を巴の中にゆっくりと挿れた。

まだ指だというのに、きゅうきゅうとそこは締め付けてくる。

動かすと、悦んでいるのかさらに蜜が溢れる。

くちゅくちゅと音を立ててそこをかき回すと、巴が高い鳴き声をあげた。


「ぁあんっ!・・・はじめさぁん・・・」


「巴くん・・・。気持ち良いんですか?」


震える身体。

潤む瞳で見上げられて、こくりと頷かれて観月はたまらなくなる。

指を増やして、ますます激しく指を動かして巴の弱い部分を苛めた。






「あ・・・。はっ・・・!はじめさぁん・・・も、お願いっ・・・!」


「素直ですね。・・・いいでしょう。僕も限界ですから。」


一度巴に口付けて、観月は自らズボンのチャックを開け、興奮した自分自身を取り出す。

先端は既に濡れそぼっており、それを濡れた巴の密壷にこすりつける。


「ぁあっ・・・!やだぁ・・・はじめさんっ・・・!はやくぅ・・・。」


「んふ・・・。指より感じてるんじゃないんですか?こっちのほうで悪戯されたほうが感じるんでしょう?」


「〜〜〜っ!はじめさんの、いじわるぅ・・・!」


「意地悪したくさせるほうが悪いんですよ・・・。」


涙目で訴えてくる巴を、容赦なく苛め続けたいと思ったが、こちらもそうそう巴を苛めてばかりはいられない。

自分にも限界があるのだから。


「じゃあ、いきますよ。」


「あぁぁああああっ!」


ずぶりと一気に刺し貫いた。

一際高い声で鳴き、狭い巴の中はねっとりとからみついてくる。

あまりの快楽に、動きを止める観月。


「は・・・はじめさん・・・?」


「ん・・・気持ちいい・・・このままでもイってしまいそうですよ・・・。」


だが、それではもったいない。


「・・・動きますよ?早く済ませて、映画に行かないと・・・」


「は・・・はい・・・。」


巴の了解を得て、観月は言葉とは裏腹にゆっくりと動き出した。

外でしようが、何処でしようが、観月は巴を大切に扱う。

巴には、快楽しか与えたくないし、最近は快楽しか与えない方法も心得てきた。

男を迎え入れた歓喜に打ち震える肉に締め付けられ、達してしまいそうになるのをこらえた。

ねっとりと自らに絡みつく。

熱い熱と、とろとろと溶けた蜜が淫靡な欲望を増幅させる。

奥で先端がこすれ、腰を引けば先端が中でひっかかり快楽を呼び起こす。

そのたびに巴は高い声で鳴き、観月も興奮する。






「あぁん!!はじめさ・・・!!気持ちいいっ!!だめぇ・・・!」


「は・・・僕も気持ち良いですよ・・・。本当に、君の身体はいやらしくできてますね・・・」


動いているうちに、大きくなる欲望。

それを感じて、また巴も興奮する。

観月とつながり、観月に快楽を与える事が巴には嬉しく、快楽でもあった。

観月は、純粋に巴から与えられる快楽に酔う。

粘膜がこすれあう中で、巴の中で溶けてしまいそうな自分。

息が上がるのを押さえられない。

激しく腰を打ちつけ、じゅぷじゅぷと互いの液が混ざり合い、興奮は頂点に達しようとしていた。


「も・・・はじめさん・・・。だめぇ・・・きもちいい・・・っ」


「なら・・・これはどうですか?」


言って観月は巴と繋がる部分より少し上の部分の豆粒くらいの大きさの肉をなでた。

巴の身体が快感で大きく震える。


「ひあ・・・ぅ!?やら、はじめさんッ・・・!そんなとこ・・・!!」


「すごい。硬くなってる・・・。濡れているし、はしたないですね。本当に君は・・・。」


「あああっ!!やあんっ!はじめさ・・・らめぇ!!らめ・・・・っ!」


肉を撫でたり、こすったりつまんだりしながら腰を動かす。

巴のろれつは回らなくなり、口の端からは快楽からかよだれがこぼれている。

限界が近いことは、巴の身体が自分の身体に教えてくれた。


「はじめさんっ!ああぁ!も、らめっ!!らめれすぅ!!イっちゃうっ!気持ちい・・・!!」


「ん・・・はっ・・・。僕も・・・。一緒に・・・」


巴が一番感じる最奥に思い切りつきたてる。

同時に、巴が激しく自分を締め付けた。


「や、やぁああぁぁんっ!!」


「―――ぁっ・・・!」






そのまましばらく抱き合って、余韻にひたる巴と観月。


「観月さん・・・」


「・・・なんです?」


「・・・気持ちよかったです・・・」


恥ずかしげに告げる巴を見ると、まだ涙の残る大きな瞳でこちらを見上げていた。

荒い息を吐き出しながら、そんなことを言う唇は赤くて艶かしい。

観月は胸が締め付けられるほどときめいた。

むさぼるように口付けて、上がる息そのままに囁いた。


「ん・・・僕も、気持ちよかったですよ。」


「・・・よかった。」


えへへと笑う巴を再び抱きしめる観月。


「映画、どうしましょう?」


「え、観に行かないんですか?折角駅まで出てきたのに。」


このまま帰っては、寮でいちゃいちゃしてるのと変わらないじゃないか。

それは、変わることに意味があるのかもしれないけれど。

それとこれとは話は別だ。

巴がそう思っていると、観月は困った表情をした。


「確かにそうなんですが・・・」


「?」


「今の君の顔を、誰にも見られたくないんですよ。」


可愛くて、色っぽい僕だけに見せる顔。

他の人に見せるなんて、もったいないことできませんよ。






観月は巴を見た。

自分にしっかりとしがみついて、黒い大きな瞳で自分を上目遣いに見上げている。

行為後のせいか、瞳は潤み、頬は赤く、唇は濡れ濡れと輝いていて扇情的だ。

愛しさと独占欲で胸がつまる。

強引にもう一度唇を奪った。


「んん・・・。はじめさ・・・」


「そんな顔した君を他の人に見られるぐらいなら、今日は帰って二人で過ごしましょう。
 
 ・・・君はいまいち、自分がどういう顔をしているのかわかっていませんから。」


「・・・そんなに変な顔してます?」


恥ずかしそうに言う巴が、可愛い。

馬鹿な子ほどかわいいものだ。

唇だけで笑って、もう一度深く口付ける。


「は・・・。ぅ・・・はじめさん・・・。えーが・・・。このまま、しばらくしたら、身体も元通りになりますから・・・。」


「ン・・・。仕方がないですね。

 じゃあ、もう少しこうして、君がそんないやらしい顔 じゃなくなったら、映画に行きましょうか。」


「・・・やらしくないですもん。」


「やらしいですよ。・・・僕の前でだけなら、幾らでもそんな顔をしてくれて構いませんが。」


赤くなった巴は、観月に抱きついて顔を隠した。

巴を抱きしめながら、今日は帰りが遅くなるかもしれないな、と観月は思った。




 終わり。






back