桃杏
夏、火照る身体は気付かなかった感情を呼び立てる。
「はぁはぁ・・・っ」
汗が首筋を伝い胸元から・・・見えなくなる。
「・・・・桃城君、お疲れ!」
「えっ!あ、あぁ!!」
日の沈む直前、桃城と杏はストリートテニス場で練習をしていた。
(こいつ・・・こんなに色っぽかったっけ・・・)
先程、釘付けになった汗の行方。
杏を見る桃城の目は以前とは少し違うものだった。
初めて出会った時から数ヶ月しか経たないのに、思春期の女の子はどんどん変わっていく。
肉付きの足りなかった太ももや胸も、弾かれそうに成長している。
顔つきだってどことなく「かわいい」に「綺麗」が混じってきている。
『触れたい』 それは桃城の心の中で今、大きくなる。
「桃城君、宿題終わった?」
「いや、まだ終わってねーよ、終わってねーな」
話している途中も杏を見る度にいけない感情が波立つ。
「家、来る?」
「えっ?」
思わぬ杏からの誘いに桃城は聞こえているのに聞き返してしまった。
「家で、宿題教えてあげるよ?」
「い、いや!俺はお前に教えてもらわなくたってできるぜ!」
(しまった・・・強がりを・・・。でも、家なんて行ったら理性失いかねないからな・・・。)
「あっそー、後で嘆いても知らないよっ!」
「そ、そんなことねーよ!」
その答えに杏はどことなく悲しそうな顔をした。
それを見た桃城は、また胸が高ぶるのであった。
そして、本当に宿題の結果がやばそうな予感もしてきた。
「・・・・家、行ってもいいぜ・・・。」
「む、宿題教えて、でしょ?」
「お前って奴は・・・。宿題教えてください!これでいいだろ!」
「うん!じゃー、行こっ!」
杏の万遍の笑みに桃城のいけない感情はまた一つ大きくなるのであった。
「おじゃましまーす」
杏の家に桃城の大きい声が響き渡る。
「誰もいないよっ、家んとこ共働きだから!」
「そーなのか・・・」
誰もいないと聞いてますます桃城の鼓動は熱くなる。
「お兄ちゃんは部活だしね♪」
「あー、そうだよなー」
家に上がり、杏の部屋へと呼ばれる。
そこに入ると女の子の香りというのだろうか、独特のいい香りが桃城の胸をくすぐった。
コップにジュースを注ぐ杏を見る。
上半身がかがんでタンクトップの胸元からは汗のせいで光る膨らみが見えた。
そこに触れると杏はどんな顔をし、声を出すのだろうか。
「はい、これ飲んで♪」
「サンキュー」
桃城は理性が飛び出そうなのと共にジュースをゴクンと飲み込んだ。
「さて、宿題しよっか!桃城君の見せて。」
「おー、ハイハイ」
「へー、青学ってこんな宿題なんだねー。」
座った2人の距離はとても近く、今にも肩が触れそうであった。
「この問いは、この方程式を使ってー・・・」
桃城の頭は杏の事でいっぱいで、方程式を入れる隙間を空けるのは苦しかった。
自分の肩より低い位置に杏の頭があり、その小ささが何とも愛くるしかった。
杏がジュースを飲む。
喉が波打つ、胸がピクリと微動する。
そして唇がジュースの残り液で艶やかに光る。
「ひゃっ・・ん・・・っ!!」
その時、桃城の理性は飛んでしまった。
杏の唇に桃城の唇が少し強引に重ねられた。
手を回した杏の肩に汗がじんわり浮かんでくる。
桃城は本能のままに杏の舌を絡めとリ、むさぼるように深いキスをした。
杏は抵抗する間も力もなく、ただ快楽へと歩み始めたのであった。
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