真田×原
本日の試合を終え、真田は無表情にいそいそと自分の家に帰宅した。
家のインターフォンを押すと、先日結婚した妻 涼香の、女性にしては低い声が聞こえた。
扉が開けられる。
すらりとした長身の美女が慎ましやかな笑顔で迎えてくれた。
「おかえりなさい。弦一郎さん。」
「ああ。」
涼香に荷物を渡して、家に上がる。
涼香の様子をちらりと見ると、何か心なしか弾んでいるように見えた。
何かいいことでもあったのだろうか、と思案していると涼香が先に話題を切り出した。
「お風呂にしますか?御飯にしますか?」
「・・・風呂だ。」
問われたので答えを返すと、涼香は「はい・・・。」と答えたが、
明らかに落ち込んだ様子を見せたので、真田は表情には出さずに驚いた。
何事か。そう思ってじっくり涼香を見つめると、いつもは長くて綺麗な指先に数箇所、ばんそうこうが貼られていた。
そう言えば、涼香は料理が苦手だったか。
そう思い出すと、涼香の妙な反応は納得が言った。
「・・・やはり飯にする。」
「え?」
「・・・お前の作った物が冷めてしまうだろう?」
そう言うと、涼香の表情は恥ずかしそうな、うれしそうなはにかんだものに変わった。
その笑顔を見て、これでいい。
と満足な気分に浸たる真田。
「あの、じゃあお風呂はいいんですか?」
「ああ・・・あとでお前も一緒に入ればいい。」
そう言うと、涼香は真っ赤になって俯いてしまった。
何か可笑しなことを言っただろうか?
涼香の作ったものは、本人が気にするほどの悪い出来ではない。
毎度指を犠牲にされては困るが、それでも最初に比べたら上達してきた。
真田は満足して夕食を終えた。
涼香が洗い物をするために台所に立つ。
何か会話をするわけではないが、いつも涼香には無理に話題を振らなくてもいいので楽だ。
普段女と話をすると、萎縮されてしまうとか怖がられたりするものだが、
涼香だけは、真剣にテニスについて話かけてきたし、一生懸命言われたとおりに練習もしていた。
彼女の好意に気付いた時は、誰にも分からない程度に微笑んだものだ。
「あ、弦一郎さん」
台所から声をかけられ、真田は思い出から意識を引き上げた。
目の前には、モデルもかくやという容姿の妻がお茶を出していた。
なんだ、と目で促すと涼香は隣に座り話はじめた。
「今日、弦一郎さんに会いに赤也が来たんですけど、何か約束してたんですか?」
「・・・切原が?」
真田は眉を潜めた。
約束などした覚えはないからだ。
突拍子のない行動をする後輩は、たまに何の脈略も用事もなく尋ねてくる。
涼香はため息をついた。
「やっぱり、ただ遊びにきただけなんだわ。さも用事があるようなこと言って。今度来たら叱ってやらなきゃ。」
「・・・家に上げたのか?」
「勝手に入ってきたんです。・・・遠慮ってものを知らないんだから。」
赤也は涼香のテニスでのパートナーを数年務めていて、憎まれ口をたたき合う友人でもある。
恐らく今回も、真田というよりは涼香に会いに来たに違いない。
しかし、だとすると―――
「気に入らんな・・・。」
「え?」
自分が知らないうちに、自分以外の男が、この家で涼香と会って話しをしていたなんて。
おもしろくない。
突然機嫌の悪くなった真田を見て、涼香は狼狽した。
片思いの期間が異常に長かったせいか、真田の機嫌を損ねる事に怯える傾向が涼香にはあった。
困った顔をする涼香を見て、愛しさと嫉妬で身体の中がおかしくなりそうだった。
「涼香・・・。」
「は、はい?」
「今度はもう、家にあげるな。」
それだけ言って、涼香を抱きかかえた。
驚いて赤面する涼香。
「さ、真田さん!?」
「お前も真田だ。・・・わかったな?」
「は、はい・・・。」
実は何故そんな事を言われるのかさっぱりわかっていない涼香だったが、恥ずかしさにただ首をふっていた。
そんな涼香の内面を察することもなく、真田はそうか、とだけ言って、今度は涼香を抱えたまま立ち上がった。
「!?」
「風呂へ行く。」
「え!?あの・・・」
「なんだ?」
「ほ、本当に・・・?」
怯えたような声。
本人は低いと気にしているが、歳を重ねるごとに色っぽさを増す、
真田が気に入っている部分の一つ。
滅多に変えない表情をかすかに笑みにして、真田は当然だ、とばかりに涼香を風呂場まで運んだ。
「はっ・・・!弦一郎さん・・・!」
胸の先端を加えられ、切なく息がもれる涼香。
形の良い胸を丹念にもみしだいていく。
標準よりも身体の大きい二人で入るには、浴槽は少し小さかったが、真田はそれすらも都合がいいと思っている。
こうやって、明るい、狭い部屋に二人だけというのが、真田は気に入っていた。
橙色の光が、間近にある涼香の白い肢体を照らす。
湯で濡れたその身体は、普段より一層艶かしく真田を誘っているように見えた。
身体をゆっくりと舌で辿ると、涼香の身体が揺れた。
ぱしゃりと湯も揺れる。
「あ・・・弦一郎さ・・・」
潤んだ瞳で見上げられて、真田は出来る限り優しくキスをした。
それでもまだ無骨な感じは否めない。
しかし、そういう無骨さを、涼香は長年愛してきた。
信頼と愛情を込めて真田に身体を預ける。
それを感じた真田は、丹念に身体を舐って、涼香の薄い茂みに手を伸ばした。
湯とは違うねっとりとしたものが指に絡みつく。
一瞬身体を硬くする涼香。
「あっ!そこは・・・!」
「問題ない・・・。」
指に蜜を絡めて、真田は涼香のそこを指でかき回した。
ぱしゃっという湯の音とともに身体を振るわせる涼香。
「ああっ!弦、一郎、さんっ・・・」
涼香はきつく、指に絡み付いてくる。
表面の慎ましやかさからは想像もできない内の激しさに、真田は溺れていく。
指を増やす。
更に震える涼香。
もう一本増やすと、とうとう高く鳴いた。
「あぁん!も、だめっ・・・!」
「何がだ・・・?」
わかりきっていることを聞いては、真田は涼香を困らせる。
真顔で言われるから始末におえない。
涼香は思う。
しかし、ばらばらに自分の中で動く指に、飢えを感じさせられてしまっていた。
早く、この飢えを満たして欲しい。
羞恥に瞳に涙を溜めるが、それでも言わなければならない。
小さな声で、自分の欲求を告げる。
「弦一郎さんが・・・欲しいんです・・・。」
「・・・そうか。」
表情には表さないが、真田はその一言に満足して、張り詰めた自分のものを涼香に突き入れた。
湯と、硬い質量が自分の中に入って自分の欲求を満たしていくのを、涼香は感じた。
「ああっ・・・!は、ぁ・・・。」
控えめに声を漏らす涼香を愛しく思い、真田は口付けを落とした。
涼香の腰をしっかりと抱いて、腰をゆっくりと動かした。
真田が涼香の奥をかき回す。
涼香の中はねっとりと蜜が肉の感触を導いてくれる。
粘膜の擦れあいに、身体がとろけるような快楽を感じる。
「ああ!弦一郎さんっ!!」
「いい声だな・・・。」
真田に耳元でそう囁かれて、涼香は真っ赤になった。
しかし、声を殺そうにも、 この快楽で声を殺すのは至難の業に思えた。
目をつぶって耐えようとすると、涙がこぼれて、湯の中へ落ちた。
「耐えるな。声を出せ。」
「・・・や。・・・はずかしっ・・・!」
「俺が聞きたいと言ってもか?」
涼香は真田を見た。
よく見ると、顔は赤くなっているし、息も苦しそうに上がっている。
彼もまた耐えているのだと知る。
愛しく思い、今度は涼香から真田に口付けた。
真田が激しく涼香を貫くと、今度は声を抑えなかった。
風呂場に涼香の喘ぎが篭ったように響く。
「あぁんっ!!弦一郎さんっ!・・・だめですっ・・・きもちいいっ・・・!」
「そう、か。」
低く、だが興奮した真田の声に、涼香も満足するように微笑んだ。
自然に腰が動くのを、止めようと思わない。
真田が、欲しい。
「弦一郎さん・・・もっと・・・!」
「・・・ああ。」
涼香の切ない願いに、心が満たされるのを感じる。
この声は、俺しか知らない声。
切原など、聞いたことのない声。
この、飢えた声は、俺だけのもの。
独占欲が満たされる。
心の飢えが、下半身から伝わる快楽で満たされる。
涼香を見た。
快楽に酔った、潤んだ瞳で自分を見上げて浮かされたように自分を呼び続けている。
その姿に、興奮する。
激しく口付けて、涼香を満たすために腰を動かした。
荒い息。
湯がばしゃばしゃと揺れる。
構わずに二人は快楽を貪った。
真田はより深く繋がろうと、激しくピストン運動を繰り返す。
涼香からは止め処もなく蜜があふれ、さらに快楽を呼び起こす。
締め付けられる感覚が、徐々に強くなっている事に気付き、真田は涼香の限界を感じた。
「もう、イくのか・・・?」
「はっ、だって・・・!あぁ!もうっ、我慢できな・・・!」
「そうか。」
そう一言だけつぶやき、真田は涼香が弱いところを強引に刺激した。
きつく締まる感覚。
きつく締め付けられて、真田も耐えることなく欲望を放った。
「あぁああんっ!!」
「―――!!」
あまりの激しさに、涼香が気を失うことは今までも度々あった。
今も涼香は真田の腕の中でぐったりしている。
しかし、気を失うほど今日は激しくしたつもりはない。
いや、いつもそのつもりはないのだが、今日はそんなに・・・。
涼香の顔を眺める。
顔が未だに赤く染まっていて、呼吸が荒い。
・・・・のぼせたか?
真田はようやく涼香が風呂でのぼせた事に気付き、柄にもなく慌てて涼香を看病したのだった。
その後真田は、涼香にこっぴどく叱られ、しばらく風呂でのスキンシップを禁止されたとか、しないとか。
終わる。
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