観月×巴 (節分)
「巴ちゃん。きみって岐阜出身だよね?じゃ、節分に太巻き食べたりするの?」
ルドルフの部室で巴にそう話題を振ったのは木更津だった。
「あ!今日って節分ですね!はい。太巻き食べますよ。」
「そう?よかった。」
言って紙袋からとりだしたのは、テニス部員分の太巻きだった。
目を輝かせる巴。
「わあ!おいしそうですねっ!」
「皆で食べようと思って。豆も買ったよ。鬼は柳沢だね。」
「何で断定してるんだーね。」
木更津は柳沢の発言を三半規管に通さずに巴を見た。
「で、どうやって食べるの?僕、太巻き丸ままかじった事ないし。」
「関東ではしないんですよね?じゃ、あたし食べますから見ててくださいねっ!」
にこにこと言って太巻きを手に持つ巴。
それをにこやかに見つめる木更津。
そして木更津の意図にようやく気付くその場にいた部員たち。
慌てる早川と裕太と金田。
「ちょ、何を・・・!!」
「今年は東北東だっけ。あっち向いて。」
早川の抗議も無視して巴に言う木更津。
素直にも従う巴。
「じゃ、話し掛けちゃだめですよー。」
そう言って、今まさに太巻きを咥えんとする巴の口元を全員で見つめる。
ああ!私のかわいい巴が、衆人環視の中辱めを・・・!!
本人に自覚のない辱めとわかっていても目を覆う早川。
と、その時。
「何してるんですか!!!」
備品のチェックのためコートに出ていた観月が部室のドアをけたたましく開け放った。
「あ。観月さん。」
「何してるんですか!!きみは!!」
「見てわからないんですか?太巻き食べるんですよ。」
「見ればわかります!!」
じゃあ何故聞く?
そんな目で見る巴から太巻きを取り上げて、明らかに主犯と思われる木更津をにらめ付ける観月。
「・・・何させてるんですか。」
「別に?あれ、何皆顔赤くしてるの?ただ、僕は皆で節分を体験しようと思っただけなのに。」
クスクスと笑う木更津に、なんとも罰が悪そうな顔をする部員たち。
そして、わけがわからない、といった顔をする巴。
「?何なんですか?」
「きみはわからなくていいんですよ。」
「敦。やり方が黒いだーね。」
「何のことかな?」
くすくすと笑う木更津を見て柳沢は、敵にはしたくないタイプだ、という認識を再度刻み込んだ。
おわる。
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