跡桜



氷帝選前の跡部と桜乃の出会い話です。


「あっお母さんに頼まれたお花 買ってくるの忘れちゃった。」


桜乃はあせって来た道を引き返した。

頭では明日に控えた青学のランキング選の事で頭がいっぱいだった。


「・・・リョーマくんは勝つんだろうな、やっぱり。手塚先輩も。」


そんな事をぶつぶつと呟きながら歩いていると、何時もの様に誰かにぶつかった。

この日も手には缶ジュースを持っていた桜乃は、相手の服にシミを付けてしまった。


「っち、何だお前!?ぁあ。」






桜乃は焦って言葉が出なかった。


「ごご・・・・」


「・・・まぁいい。ちょっと俺に着いて来いよ。」


『この人、氷帝の跡部さんだよね?』


桜乃は跡部に強く腕を捕まれ抵抗できなかった。


「・・・あ・・あのっ氷帝の跡部さんですよね?」


跡部は桜乃の制服を見ていった。


「お前、青学か?じゃあ尚更付き合ってもらわないとな」


 



跡部が桜乃を引きずってきた場所は、氷帝学園の跡部専用の部室だった。


「・・・じゃあ俺はお前に掛けられたジュースの付いたジャージを着替えるとするか。」


桜乃は恥ずかしそうに下を向いた。


「あ、あの跡部さん、私外に出てます。」


桜乃が外に出ようとすると半裸の状態の跡部が桜乃を後ろから押さえ込んだ。


「何してやがる?お前を連れてきた意味がなくなっちまうじゃねーか。お前は俺の世話を今からするんだよ。」






桜乃は抵抗できないまま、跡部の自身に手を置いた。

顔が段々赤くなる桜乃を楽しそうに見つめる跡部が言った。


「どうした?出来ないとでもいうのか。」


桜乃は泣き出しながら言った。


「あと・・べさん、許して・・・。私、好きな人が・・・・。」








都大会1回戦、桜乃は浮かない気持ちで、ギャラリーの中に混じった。

越前が桜乃に話し掛ける。


「あんた、最近浮かない顔してるじゃん。まだ俺に気があるわけ?」


越前の声も聞こえないほどに桜乃には耳鳴りがしていた。






シングルス1の跡部は長いタイブレークの末、手塚を破った。


「跡部さん、勝っちゃった・・・。」


「何竜崎、あいつと知り合いなの?」


「リョーマくん・・・。」


リョーマのアップに付いて行った桜乃は、悲しそうに言う。


「私、リョーマくんが好きだった、でも・・・」






「おい、桜乃!」


跡部の声に敏感に反応したのはリョーマだった。


「何、あんた。竜崎になんか様なわけ?」


越前の挑発にも乗らずに桜乃に向かっていった跡部をリョーマは睨んだ。


「桜乃、行くぞ。約束覚えてるんだろ?」


2回桜乃は頷き、跡部の跡を追っていった。






「ちゃんと告白したんだろうな?」


「うん、ちゃんとした・・・。でもやっぱりリョーマくんは私のこと好きじゃないみたい。」


跡部は桜乃を後ろから抱きしめた。


「叶わなかったなら忘れればいいだろう。お前には俺がいる。」


跡部の声に桜乃は涙を流していった。


「跡部さん、何で私のこと好きでいてくれるんですか

 私は・・・。」


桜乃の頬にキスを落とし跡部は微笑む。


「越前はお前の事が好きだ。都大会前にあいつに会って確信した。

 でもそれを言わなかった俺は最低だ。

 そして自分の気持ちを言わない俺もな。」









跡部の部室で


「私、好きな人が・・・。」


跡部は言った。


「そいつに振られれば何の躊躇もなく出来るって訳か・・・。ちょうどいい。

 それまでお前には手を出さないでやる。

 この有効期限は都大会までだ。」


「あんなこと言ったのはただの嫉妬だった。

 おれはお前に一目ぼれしたなんて言えなかった。

 あんなやり方しか知らなかったんだ。」


跡部の告白に桜乃は戸惑いながらも答えた。


「わたし、跡部さんのこと好きになるかもしれません。」


桜乃はそれから団体戦に負けてしまった跡部にお弁当を作りデートの誘いをした。

跡部は嫌がりながらも桜乃の弁当たべたさにピクニックに付き合っている。

こんな関係もいいかもしれないと跡部は思った。











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