切原×巴
草の香りと、太陽の柔らかな暖かさにウトウトしながらフッと目が覚めた。
隣には切原さんが目をつぶったまま横たわっている。
…そうだ、確か「イメトレだー!」って言って横になっていたんだけど…。
気付かないうちに私ってば眠っちゃって居たんだ。
「もー、切原さんってば起してくれても…」
「くー…くー…」
「…え?」
寝ちゃった事に対して照れながら切原さんに話し掛けてみたら、
当の本人もグッスリと夢の世界へお出かけ中。
そりゃ、毎日朝から晩まであれだけハードな練習をしていたらウトウトしちゃうもんね。
そう思いながら切原さんの顔を覗き込んでみた。
男の子の寝顔なんて、お父さん以外で滅多に見た事無いし、
しかもこんな至近距離でだなんて勿論初めての経験だったりもするけど。
何でだか切原さんの寝顔はとても可愛くて、微笑ましくなってしまう。
「フザけたりする顔も真剣な顔も普段からは見れるけど、寝顔はそうそう見れないよね。」
一人でフフンと笑って何気無く切原さんの髪の毛を触ってみる。
「一度で良いから、こう…クシャクシャって触ってみたかったんだよね。
でも流石にそんな事は出来ないけど…あー、でもこういう感触なんだー。楽しい〜。」
切原さんを起さないように優しく静かに髪の毛を撫でて居たら不意にその手を捕まれた。
「…ぇっ!?」
グイっと引っ張られてぎゅーっと抱き締められる…って…
ええぇ!?今、私ってば切原さんにだ、抱き締められてる?
「ちょ…きりは」
「んん〜…真田副部長…もう肉は食べれません…。たるんでません…。ぐぅ…。」
「………。」
な、何だ。
寝惚けているだけか!あービックリした!
ビックリしたけど、一体どういう夢を見ているんだろう?
それにこのまま抱き締められている状態じゃ駄目だし…。
「切原さん…ちょ、起きて下さいよ、切原さん。」
「ん〜、デザート食べるんだからうるさいよ…。」
「だから起き…」
そう、言い終わらない内に唇に柔らかい感触が触れて来て口を塞がれた。
それが切原さんの唇だとビックリして、身体を突き飛ばそうにも力が強くて叶わない。
舐める様に、味わう様に口内を切原さんの舌に這われる感じがゾクゾクと襲ってくる。
「んっ…は…離して下さい!」
ようやく唇から開放されて一言だけ言うと切原さんは抱き締めて居る腕にもっと力を込めた。
「嫌だ…。離したくない…ようやく、手に入ったのに…。」
「え…。」
その切原さんが切ないように言った言葉に気付いて、
顔をあげようとした時にムニュッとお腹のお肉をつかまれた。
「たるんでます…。」
「う…うるさいーーー!!!」
バチーーンと切原さんのホッペを引っ叩いて突き飛ばす。
「へ?と、巴??」
「切原さん最低!お、女の子のお腹を掴んでたるんどるだなんて!酷い!」
「何のことだよ?俺は今焼肉とデザートの杏仁豆腐を堪能していたんだぞ?」
「寝惚けていたんですか!?それこそ最低です!わ、私に…き、きす…をしたのに…。」
「…は、はぁ!?」
「そうですよ!キスですよ!ファーストキスですよ!もう切原さんなんて知らない!」
「あ、おい!ちょっと待て、巴!」
そのまま切原さんを置いてその場を逃げる。
そうだよ、初めてのキスだったのに!酷い、酷い!
凄いドキドキしたけど、でも嫌じゃなくて…むしろ凄く嬉しくて…。
もう、切原さんのバカーー!
「ドキドキして凄く嬉しかったなんて…。」
絶対に教えてあげないんだから!
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