観月×巴



「・・・ありがとう。気持ちだけで十分ですよ。僕はいつもの巴くんで、十分満足してるんですから。」


「でも・・・。」


「何です?また誰かにへんな知識でも植え付けられたんですか?

 つけてあげると結婚できるとかいうおまじないだとか。

 だったら必要ないと思いますが。」


最後の辺りが小声だ。

巴は以前、木更津に余計なことを吹き込まれて信じ込んだ経歴がある。

しかし、巴はそれを否定した。


「今日は、ただあたしがしてあげたかっただけなんです・・・。

 だって、いっつも観月さんが色々してくれて、あたしはなんにもしてないから・・・。」


コートでもベッドでも、観月の言うままだ。

自分から観月には何もしていない。

巴は、それがなんだか申し訳無いような、寂しいような、そんな思いを抱いていたのだ。

観月は瞳を優しく細めた。

どうして彼女は、いつもこんなに一生懸命で可愛いんだろう。

観月は巴の額に口付けた。


「いいんですよ。そんなこと・・・。僕は巴くんを抱けるだけで、すごく幸せなんですから・・・。」


「・・・本当に?」


「ええ。もちろんです。」


巴は、今度こそ、にっこりと天使の笑顔を観月に向けた。

観月に抱きつく。


「えへへ。観月さん、大好き。」


「んふっ。僕もですよ。」


巴はしばらく観月に抱きついていたが、不意に観月の分身を握った。

どきりとする観月。


「な、なんですか?」


「・・・つけてあげられなかったですけど、これならできるから・・・。」


そう言って、ゴム越しから観月のモノをなで上げる。

ぞわりとした感覚が、腰から這い上がってきた。


「と、巴くん・・・。」


「これは、止めませんよね?」






で舐めると、巴は不思議そうな顔をした。


「・・・めろん味・・・?」


「あ・・・ああ。何でも、香料つきのゴムだそうで。慌てて買ったんで、適当に選んだんですけれど。」


寮生活は、秘密の時間を持とうとすると厳しい物がある。

買い物など、絶対に生徒がいる近くの店になってしまう。

ゴムを購入した時、たまたまクラスメイトが通りかかり、慌てて会計を済ましたのだ。

どんな物でも、機能さえ果たせばいい。


「味つきのものが、市販されているというのは知っていましたが、コンビニでも買えるんですね。」


「へー。面白いですね。」


また、べろりと観月を舐める。

まるであめを舐めるように無邪気で、観月は妙な背徳感にどきどきした。

そんな観月の内心も知らず、巴は観月のモノを前にして無邪気に笑った。


「ふふっ、おいしい。」


「・・・お、おいしい、ですか?」


「はい。これなら、そんなに苦しくないです。」


そう言って巴は観月の味を味わうように、舌で丁寧に形を辿っていった。

薄いゴム越しに、巴の生暖かい舌の感触を感じて、早くも巴の手の中で反応してしまう。

それでなくても、自分のものを舐めて「おいしい」なんて、男のロマンそのままなシチュエーションはない。

観月でなくても、男なら興奮する。


「―――っ・・・めろん・・・好きなんですか・・・?」


「はい。あ、でも嫌いな食べ物の方が少ないですけど。」


上がる息を悟られないように話し掛けると、巴は観月を握ったまま笑顔で見上げてくる。

その無邪気さと淫靡さの差が、観月を興奮させる。

巴は、舌で辿るだけに飽きたのか、飴のように観月のものを口に含んだ。

口の中でころころと転がすような所作に、観月は声を殺すのを苦心した。


「ぅ・・・っ・・・歯を、立ててはだめですよ・・・。ゴム、破けてしまいますから・・・」


「ふちゅ・・・ん。ふぁひ・・・んぷ。ん、ん・・・。ちゅうっ・・・。」






巴は観月に言われたとおり、ゴムを破かないように丁寧に観月のものをしゃぶった。

めろん味がお気に召したのか、その様はいつもよりねっとりとしていて絡むようだ。

自分にまとわりついてくる巴の舌の動きに、観月は荒い息を隠す事が困難になってきていた。

声も、荒い息のなか漏れる。


「ぅ・・・あ!は・・・。」


「ん、ちゅうっ。・・・ひもひいい?みひゅひぃひゃふ」


口に含んだまま、自分を上目遣いに見上げてはそう尋ねる巴の頭を、やさしくなでてやる。

しかし、これ以上はもう、耐えられない。

既に巴の口には収まりきらないほどの質量になったそれを、

それでも巴は一生懸命に含んでいる様は、観月にこれ以上我慢するという選択肢を与えなかった。


「・・・っ巴くん・・・!もう、僕はいいですから・・・!」


「ふ・・・?ん、もう、いいんですか?」


観月は巴の身体を自分から離して、いきなり巴の秘所に指を入れた。


「ひゃう!?な、何、するんですか・・・っ!!」


「・・・濡れてますよ。」


巴の秘所は、観月の愛撫を受けることなく蕩けていた。

それを指摘されて、巴は恥ずかしそうに俯いた。


「僕のをいじっていて、感じてたんですか?」


「・・・・・・・・っ!み、観月さん・・・!ああっ!!」


観月は指を入れた密壷をかき回した。

ぐちゅぐちゅという水音を立てながら、そこは滑らかに観月の指を受け入れた。

きゅっと自分の指に絡み付いてくる巴の様子に、観月は幾分いつもより余裕の無い笑顔を浮かべた。


「僕が、欲しかった?」


「・・・。」


「ねぇ、巴くん。正直に言って。僕が、欲しかった?」


「・・・。」


巴は、顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。

手を伸ばし、観月の身体に絡めて、自分の身体も観月に密着させた。

それだけで、観月の理性は遥彼方へ飛び去った。

巴が先ほどまで愛撫していたものを、巴の柔らかく溶けた秘所へためらいもなく挿入した。

張り詰めた観月が、巴を激しく貫く。


「ひゃああああっ!み、みづきさんっ!!ああんっ!!」


「っ!!巴くん!すごい!いいですよ!!」






観月は激しく腰を動かし、巴をさらに溶かしていく。

ゴム越しとはいえ、ねっとりと絡み付いてくる巴のなかは気持ちがいい。

動くたびに襞が絡まり、きゅっと締め付けてくる。

それが観月にとってどれだけの快楽なのか、巴は知る由もない。


「はぁん!や・・・観月さ、おっき・・・!すごいっ!!」


「きみが悪いんですよ。きみが、僕を挑発なんかするから。」


観月が弱い部分を貫く度、巴は甘くすすり泣いて観月を見つめてくる。

たまらなく、愛しい。愛しさを感じるに比例して、欲望が張り裂けるのを感じた。


「ん・・・も、イきますよ・・・!!」


「んぁっ・・・!!あ!観月さんっ!!」


巴の最奥を愛しさに任せて突き上げると、巴は一際甲高い声を上げて、観月とともに果てた。








数日後、早川 楓は女子寮の自分の部屋に入ると妙な出来事を見かけた。

同室の赤月 巴が、コンビニで買ってきたであろうバナナを机の上においてなにやらうなっているのだ。

その光景があまりに異質で、

バナナのとなりの乙女が持つにはいささか恥ずかしい箱が置いてあった事に、早川は気付かない。


「何をやっているの。バナナとにらめっこするようになった?」


「うーん・・・楓ちゃん・・・。」


なにやら真剣に悩んでいそうな表情で見つめられて、

早川はこれは何かあったのかと身構えたが、ならばバナナはどうなのだと思う。

巴の考える事なので、恐らく自分には思いも着かない馬鹿馬鹿しい悩みなのだろう。

実際その通りなのだが、早川は知るすべを失った。

巴は、早川に何かを言おうとして、やめた。

巴らしからぬ賢明な判断だった。


「いい。何でもない。やっぱやめる。」


そう言って、またバナナとにらめっこし始めた。

早川は限りなく胡散臭い表情をして、それでも何も言わなかった。

巴が観月にリベンジする日は、近い。(かもしれない。)




 終わる。








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