リョ桜
せめて、二人きりの時には優しくしたい。
怖がられたくない。
頼って欲しい。
まだ緊張している桜乃の身体を擦るように、リョーマは彼女のTシャツの裾から手を差し入れた。
柔らかなその皮膚は、血が通っていないかのように冷たい。
始めはいつもそうだ。
リョーマの触る場所に神経を集中させているのが掌越しに伝わってくる。
長い口付けを終えると、桜乃は小さく息を漏らす。
リョーマは涙の跡を伝って頬から首筋に唇を落とした。
「んっ。」
ぴくん、と桜乃の身体が強張る。
感じる場所を刺激されるといつも、声を殺して踏ん張ってしまう。
そんな桜乃の慎ましさが可愛い。
背中を温めるように擦っていたリョーマの手がぱちん、とブラジャーのホックを外した。
「あっ。」
桜乃は更に赤面して俯いてしまう。
顔が、見たい。
リョーマはそっと桜乃の身体を押すと、ベッドへと横たえた。
桜乃は恥ずかしそうに両手で顔を隠してしまう。
「顔、見せてよ。」
少し焦れたようなリョーマのおねだりに、桜乃は恐る恐る両手を外した。
目元が真っ赤に潤んでいる。
その様子にリョーマはにっと意地悪く笑って見せる。
「もう感じちゃった?」
優しくしようと思ったばかりなのに、桜乃のその恥じらいがリョーマの本能を刺激するのだ。
リョーマは壊れやすい磁器を扱うように震える桜乃の脚をそっと撫で上げていく。
脹脛から膝、膝からその裏を通って太腿へ……。
「っは……。」
桜乃は必死に声を堪えながら息を漏らしている。
初めての時と比べるともう、少しは慣れていていい筈なのに彼女の反応は恐ろしく不器用だ。
そういう所が、愛しい。
――カルピンの方がまだ駆け引きとか知ってるな。――
などと失礼な事を考えながら、リョーマはやっと温まってきた彼女の脚に唇を押し付けた。
「んんっ。」
桜乃が声を出すまいと両手で口を塞ぐ。
どうせすぐに、メチャクチャになっちゃうのに。
リョーマは必死な桜乃の努力に目元で笑うと舌を突き出して太腿を滑らせた。
「ゃあ……んっ。」
こんな声、誰にも聞かせられない。
リョーマの背筋をゾクゾクとした快感が走る。
短いスコートを捲り上げると、すぐに白い下着が目の前にある。
リョーマはつ、と下着のその部分へ指を這わせた。
「あっ……んんっ。」
微かに、湿ってる。
態度は相変わらず固いのに、身体は反応し始めている。
それが、嬉しい。
自分の手の感触を、唇の感触を、身体を、桜乃が覚え始めている。
リョーマはぶるっと身震いした。
「バンザイして。」
桜乃に両手を上げさせると、Tシャツを脱がせる。
半分脱ぎかけた状態だと恥ずかしがった桜乃がこっそり下ろしてしまうので、いつも全部脱ぐ事にしているのだ。
下着も剥ぎ取るとふるん、と軽く胸が揺れる。
流石に豊満とはいかないが、ささやかな曲線の先端に薄く色づく小さな突起が可愛らしい。
リョーマはいきなり、その先端に唇を落とした。
「やんっ!」
思わず桜乃の唇から声が漏れる。
リョーマはちゅっと音を立てて何度も口付けした後にその小さな蕾を舌で包むように口に含んだ。
「ふ……あぁ!」
自分の愛撫に自信がある訳ではないが、桜乃の身体はすぐにリョーマに反応する。
舌先に返って来る蕾の形と硬さが証明してくれる。
桜乃の乳首を舌で弄びながら、リョーマは桜乃の下着の上から秘裂に指を押し当てた。
桜乃の身体が大きく跳ね上がる。
リョーマは桜乃のショーツを指で引っ掛けると一気に下げた。
「あっ。」
桜乃がいやいやをするように頭を小さく振っている。
それに構わずにリョーマは指先を晒された秘所へとあてがった。
間髪いれずにくにゅくにゅと弄るような動きが未発達な桜乃の花弁を押し開いていく。
「待って……や、んんっ!」
「……待たないっ。」
リョーマ自身もそろそろ滾ってきている。
余裕がないのは情けないが、我慢も出来ない。
息遣いが激しくなってくる。
とろとろとした熱い桜乃の中の感触が、リョーマの血液を沸騰させる。
「あっ!ぁあ!」
ぎゅっと胸元で手を組んだ桜乃が祈るような眼差しでリョーマを見詰めている。
その潤んだ目にリョーマの理性が音を立てて吹き飛んだ。
「……いい?」
これも、情けない質問なのだがそうも言っていられない。
桜乃は夢を見ているような眼差しで、こくんと小さく頷いた。
「いくよ。」
服を脱いだリョーマは硬く握り合わされている桜乃の両手を解くと、しっかりと握り締めた。
最近ちゃんと持ち歩いている避妊具も、付けている。
桜乃の身体に何かがあったら全て自分の責任だと、その自負もある。
ずっ、とリョーマ自身が桜乃の中へ挿入っていく。
「んんっっ!」
桜乃の目尻から涙が零れ落ち、リョーマは彼女に締め付けられる快感と戦いながらも
こつん、と額をぶつけて桜乃の顔を心配気に覗き込む。
「痛い?」
「……ううん、大丈夫……。」
そう、細く答えるが、手に篭められた力と震えが桜乃の頑張りを訴えている。
今日で四回目。
徐々に解れてはいくのだろうが、まだお互いに達者ではない。
「動くよ。」
包み込む桜乃の中の蠢動に耐えられずにリョーマは身体を起こした。
じゅっ、と湿った音が静かな室内に大きく響く。
「く、ぅんっ!」
桜乃の腰が逃げ場を求めるように浮かんだ。
うねる膣内に抵抗してリョーマは何とか自分を保とうとするが、あまり意味がない。
きつい締め付けが、リョーマの迸りを急かしている。
「あ、はぁ……!」
我慢の限界なのか桜乃の唇から漏れる声が淫らに変わっていく。
メチャクチャ、気持ちいい。
リョーマの律動が速度を上げ始めたその時。
「えちぜーんっ。」
ドン、とドアを叩く音にリョーマは凍りついた。
鍵は、掛けてある。
自分が鍵を持っているから外でドアを叩いている桃城はこの部屋には入れない。
「は、あっ。」
堪えきれない桜乃の声に、慌ててリョーマは桜乃の唇を押さえた。
頭がフル回転しているその時にも潤って脈動する桜乃が、リョーマをきゅうきゅうと締め付けてくる。
「越前ー。いないのかー!?」
飲んでいるせいなのか、桃城はいつもよりも声が大きい。
いや、そう感じているだけかも知れない。
リョーマの手の下で、桜乃の目が怯えている。
――怖がんなくていいよ。――
リョーマは桜乃の口から手を離すと口付けし、ぎしっと動きを再開した。
桜乃は驚いて逃げようとするが、リョーマは桜乃に笑いかける。
「いいから、しっかり掴まって。声出ちゃいそうなら、俺の肩に噛み付いていいから。」
リョーマの笑みに、桜乃は黙って頷くと彼の肩に唇を押し当て、首にぎゅっと腕をまわした。
ずっ、とリョーマが桜乃の中に突き立てられる。
桜乃の中は熱く潤い、激しいリョーマの動きを歓迎するように蠢く。
「んんっ。」
「なんだよー、寝ちまったのかぁ。」
ドア一枚向こう桃城が大欠伸をしながら去っていく。
リョーマはほっとしながら動きの激しさを増した。
「くぅっ。」
思わず自分も声を漏らし、慌てて桜乃の様子を見ると桜乃はまだ必至にリョーマの肩にしがみ付いている。
三つ編みが解けて、シーツに緩やかな帯が掛かる。
先刻三つ編みにキスした時の忍足の見下した笑みを思い返して、リョーマはふっと笑った。
――あんなんで勝った気になられちゃ堪らないよ。――
「いくよ……っ。」
「ん、ぁあっ!!」
桜乃の身体が仰け反り、リョーマはきつく眉根を寄せた。
白濁として物が中に放出され、激しく息を吐きながらリョーマは桜乃に無数のキスを落とした。
「……大丈夫?」
「……うん。」
どうにか身体熱が引いた頃、リョーマと桜乃は衣服を整え顔を見合わせるとそっと部屋を出た。
宴会は、まだ続いているようだ。
大きな喚声や笑い声がまだ響いている。
「部屋まで送る。」
そう言って歩き出したリョーマのシャツの裾を捕まえた。
「あの……。リョーマくん、打ち上げに戻らなくていいの?」
その途端にピクン!とリョーマの眉が跳ね上がった。
「あのねぇ……!」
怒鳴られそうになった桜乃は咄嗟に身体を硬くする。
緩やかに曲線を描いて背中へ流れる解けてしまった髪。
瞳にはまだ熱の余韻が残り、身体の線も罪作りな危うげな色香を漂わせている。
こんな、艶っぽい姿を誰かに見せて溜まるか!
「駄目。」
言い切ってふい、と向き直るとリョーマは桜乃の部屋を目指してすたすたと歩いていく。
桜乃は引きずられるようにその後ろへと続いた。
【end】
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