テニスの王子様 竜崎桜乃改造計画 第一幕 リョ桜篇
「悪いんだけど、ちょっといいかしら。」
いつものように退屈な授業が終わり、部活に行こうとしていた時、リョ−マを呼ぶ声がした。
「たしかあんたは・・・」
この青春学園において、男子テニス部の栄光の影に隠れ、ほぼ存在感0の女子テニス部、
部員数たったの8人という存続すらあやしくなりつつある部の部長だった。
「なんか俺に用っすか」
とリョ−マ。
「実は折り入ってお願いがあるのよ。とりあえず話だけでも聞いてもらえるかしら」
「いいっすけど。部活ありますんで手早くお願いします」
「大丈夫。手塚君には伝えてあるわ。じゃあ屋上にまで行きましょう」
同じ頃、女子テニス部唯一の1年生である竜崎桜乃も部長に言われて屋上へ向かっていた。
「部長のお話って何だろう。それも屋上でだなんて」
などと、考えつつ、駆け足で階段を上っていく。
すると、前に部長とリョ−マが同じく階段を上っているのが見えた。
「どうして部長がリョ−マ君といっしょにいるの? もしかしてリョ−マ君も屋上にくるのかなあ。」
と桜乃は思った。
少し近寄りがたい感じがしたが、部長とリョ−マが一緒に歩いているのに堪えられなかったので、
勇気を出して声をかけることにした。
「部長」
「あら、竜崎さん。ちょうどよかったわ」
「あの。えっと。私に話って何ですか。」
「それを言うためにわざわざ屋上まで呼んだのよ。・・・越前君もいっしょにね」
「えっ」
「えっ」
リョ−マと桜乃の声が重なる。
「まぁとりあえず屋上にまで行きましょう。話はそれからよ」
そして三人は屋上へと向かった。
なんとか桜乃はリョ−マと部長の間に入り込み、少しうれしい気分になっていたが、頭は混乱しきっていた。
(どうして部長はリョ−マ君をいっしょに連れてくるの?それに私への話と何か関係があるの?)
一方、リョ−マも戸惑っていた。
(俺への話って何だろう。それも竜崎とだなんて)
部長が少し錆び付いて重くなっているドアのノブを開く。
眩しい日の光が一面を照らす。
「さあ話そうとしましょうかね」
どことなく部長は緊張しているようだ。
「私たち女子テニス部は部員不足って事は知ってるわよね」
とリョ−マに確認してくる。
「はい、一応」
「知ってるとは思うけど私たち2週間後春季選手権があるの」
(知らなかった・・・)とリョ−マと桜乃。
「竜崎さんも含めて部員が8人いるんだけど、そのうちの一人、私がこのとおり怪我をしちゃって」
と部長が袖をめくり、こんがり日焼けした腕に痛々しい包帯が巻かれている。
「そこで次の春季選手権の団体戦に竜崎さんに出てほしいの。」
「えっ」
と桜乃。
「ちょっと待ってください。それと俺にどんな関係が」
「そんなに慌てないで。本題かこれからよ」
と鋭い部長の声。
自然リョ−マの声がとまる。
「それで、私たち女子にはコートが1つしか割り当てられていない」
竜崎先生もかなり悩んだそうだが、やはり実績のない女子テニス部には1つしかコートは割り当てられなかった。
「そして、正直失礼な話、わたしたち3年や2年生も1年生である竜崎さんにかけてあげる時間は無いの。
だから、越前君、あなたに彼女のコーチを頼みたいの。
ほら、同じ1年同士だしいろいろ教えやすいだろうしさ」
と、最後のほうはかなり早口になりながらも何とかという感じで部長が言った。
「えっ」
「えっーーーーーーーーーーーーー」
とリョ−マと桜乃。
「いや、ほら、えっと無理なお願いってのはわかるんだけど。
その私たちにはもう後が無いのよ。
この試合で勝たないと3年はもう引退寸前だし、
その後、女子テニス部は廃止!みたいな事になるかもしれないし。
だからこの試合だけはどんなことをしても勝たないといけないの!」
と部長の声にも自然と熱が入る。
「でっ、でっ、でっ、でも部長」
としどろもどろになる咲乃。
「お願い!私はこの部をつぶしたくないの。あなたもそうでしょ」
「それはそうですけど」
「だったら」
「いいっすよ」
としずかな声。
「ちょ、リョ−マ君」
といっそうあせる桜乃。
「本当?越前君」
とうれしそうな部長。
「どんなことをしても勝ちたいんですよね」
とあくまで冷たく、しずかなリョ−マ。
「もちろんよ。それじゃあ引き受けてくれるわね」
と身を乗り出さんばかりの部長。
「ういっす」
「竜崎もそれでいいよな」
「うー、リョ−マ君がそれでいいなら」
「じゃあ決まりね。2週間後だからよろしくね」
「ういっす」
「はい」
――次回予告――
いよいよはじまる竜崎桜乃改造計画。
まず一番手、越前リョ−マ。どんなゲームを展開するのでしょうか。次回乞うご期待。
|