観月×巴
「ん・・・。観月、さん・・・。」
「巴くん・・・。」
今夜も飽きずに、観月はじめと赤月巴は、観月の寮のベッドで恋人同士のコミュニケーションを行っていた。
先日まで巴が月のものだったもので、観月は一週間ほどおあずけを喰らった。
その反動で、今夜は少し箍が外れている。
無論、観月が乱暴に巴を扱うわけもなく、箍の外れ方はこのようなものだった。
「巴くん・・・。可愛い。身体、やわらかい・・・。」
巴の体中の、いたるところにキスを落とす。
くすぐったそうに、恥ずかしそうに巴は身をよじる。
「ん・・・。や、だ。くすぐったい・・・。む・・・。」
唇にも、甘くて深いキス。
巴をとろかすためだけに存在するそのキスは、意図されたとおりに巴に作用する。
唇を離して巴を見れば、巴は黒く大きな瞳を恍惚でうるませていた。
柔らかそうな桜色の唇から、切なげな吐息が漏れる。
それがまた、一層観月の雄を煽る。
「・・・可愛い・・・。一週間もきみを抱かずにいられたなんて、信じられませんよ。」
「・・・観月さんのばか・・・。」
巴はふてくされたようにそっぽを向いた。
照れているだけだと解っている観月は笑みを深くし、巴の身体をまさぐっていく。
白いシーツにばら撒かれた巴の黒髪は、ますますシーツとともに乱れていく。
その様子も、観月は一瞬たりとも見逃さないというように凝視していた。
可愛い。
こんな可愛い巴くんが、僕だけのものだなんて・・・。
一人の世界に入ってうっとりとしている観月。
コートでもベッドでも、そういう変な癖が観月にはあった。
しかし、巴は一人の世界に旅立っていることなど構わず、観月に擦り寄っていく。
自分とは違う低めの体温が心地いい。
巴もまた、観月を独り占めする快感に酔っていた。
どこまでも、どこまでな二人である。
ふと、巴は自分の太ももに当たる固い感触に気付いた。
ああ、そうか。巴は一人納得して、自分の身体を舌と唇で辿る観月を見た。
「ね、観月さん。」
「ん?・・・なんですか?プラナリアがどうして分裂するかは、聞かれても困りますよ。僕は文系なんですから。」
以前、コトの最中にそんなことを聞かれたので釘をさした。
巴は首を横に振り、にっこりと笑った。天使の笑顔。
(に、観月には見えた。)
赤い唇から、鈴の音のような声。
「ゴムどこですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
天使の笑顔で、爆弾発言。
観月は被爆した。
「ね、観月さん。ゴム。」
「・・・・・・・・・・・・・・・なんですか。急に。」
「急じゃないですよ。そろそろかと思って。」
「余計な気を使わなくてもいいんですよ。」
巴は頬を膨らませた。
さっきまで女として乱れていた面影はなく、ただ、幼い。
観月は頭を抱えた。
「何ですか。人が折角つけてあげようと思ったのに。」
「ええ、そうですか。それはどうも・・・・・・・・・・・・・・・って、今きみ、なんて言いました?」
「だから、ゴムつけてあげますって。」
またにっこりと微笑まれた。
つける。
ゴムを。
ゴムは、スキンで。
明るい家族計画。
だから、僕のアレに。
そういえば、何でゴムの自動販売機はあんなに古臭くてぼろぼろで不衛生を装っているのでしょうか。
逆効果じゃないんですかね。
「って、本気ですか!?」
混乱を極めた赤い顔で、観月は叫んだ。
「な、なんですか?そんなにおかしいことなんですか?
おかしいなぁ。本で読んだら悦んでくれるって書いてあったのに・・・。」
「何読んでるんですかきみは。いえ、そんなことは後でいいです。と、とにかく、本気で言ってるんですか?」
「?はい。」
顔を真っ赤にして焦っている観月に、巴は不思議そうな眼差しを向けた。
ゴムをつけてあげることって、そんなにびっくりすることなんだろうか。
観月以外の人としたことがないから、標準がどうなのかよくわからない。
何せ、お互い初めてだったのだし。
でも、ゴムつけてあげるくらい、口でしてあげるより楽だと思う。
だって飲まなくていいし。
巴の不思議そうな瞳に、やっぱり観月は焦るのだ。
観月としては、口でしてもらうのとはまた違うような気がして嬉しいような恥ずかしいような、
そんなことしてもらっていいのかどうかというなんだかごちゃごちゃした気持ちがあるのだ。
嬉しさ70%。その他30%といったところだが。
無論、嬉しさ70%がその他30%を消し去るのに時間はかからなかった。
おずおずと巴にゴムを手渡す。
「では・・・その、よろしくおねがいします。」
「あ。こちらこそ。」
意味不明な会話の合間に、巴はゴムの封を切る。
観月の足の間に割って入り、立ち上がりかけている観月のモノを間近で見つめた。
「・・・じっくり見たことなかったですけど、こんななんですね。観月さんって。」
「女の子が、恥ずかしげもなく眺めるんじゃありません。は、早くしてください。」
微妙に恥ずかしそうな観月の声が、巴の羞恥心も呼ぶ。
急に気恥ずかしくなって、巴はおずおずと観月のムスコにゴムをあてがった。
自分の足の間に、巴の白い身体があり、股間に身を近づけているその姿は、観月を視覚的に興奮させた。
竿を持つ巴の手に、敏感に反応する。
おもわず硬くなるそれに、巴は気がついただろうか。
観月の先端に、ゴムが入る―――かと思われた。
巴が困った顔をして見上げてきた。
「・・・観月さん・・・。上手く入りません・・・。」
観月、ちょっと拍子抜け。
「何でですか。ちゃんと入りますよ。」
「だって、なんかぬるぬるするし、すべって入らない・・・」
「ぬるぬるするのはしょうがないです。だって久しぶりなんですから。嫌なら代わりなさい。」
観月の台詞に、巴がまた膨れた。
「やだ!入れます!!一度言ったからには、最後までやります!!」
何処までも男らしい。
巴は強引にゴムに入れにかかった。
観月のものをぎゅっと握る。
「わ!こら!!そんなとこ、そんなに強く握ったらだめです・・・っ!!うっ・・・!」
思わず感じた声を出してしまい、余計に恥ずかしくなる観月。
しかし巴はそんな事に気付きもしない。
「だって!こうでもしなきゃ入らないです!!」
「そっ・・・そんなことしなくったって・・・入りますよ・・・!
あっ!!こら!!そんなにひっぱったら、ゴムが破けますよ!!」
「観月さん!!動かないで下さい!!」
無理やり入れようとして、観月の一物をあちこち握ったりする。
観月は自分の股間に走る耐え難い刺激を、なんとか押さえ込んで巴の初体験に協力しようとした。
しかし、やはり上手くいかない。
観月の先端をぬらす欲望の液が、巴の邪魔をするのだ。
「もー。観月さんのえっち!!何考えてるんですか!!」
「この状況でえっちもなにもないですよ!!ナニ考えてるに決まっているでしょう!!」
巴の逆切れに、流石の観月も切れ返す。
「もういいです!きみにまかせていたら、僕の方がどうにかなってしまいます。」
「ぶー。観月さん!我慢が足りないですよ!!」
「・・・そろそろいい加減にしないと、僕も怒りますよ。」
ようやく大人しくなった巴に背を向けて(見られるのが恥ずかしいらしい。)、観月は素早くゴムを取り付けた。
流石に鮮やかだ。
誰にも自慢できないが。
「はい。もういいですよ。」
「・・・ごめんなさい・・・。上手く出来なくて。」
しょんぼりとしている巴。
彼女は、ただ自分を悦ばせようとしていただけなのだ、と改めて思った。
巴の乱れた黒髪の頭を撫でる。
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